『触り』の正しい意味。「最初」ではなく「一番心に触る」ところ

2019年11月26日

「触り」と言えば、近年誤用されることが多い言葉の一つ。

『話の触りだけ教えてください』と言われたとき、正しく返答出来ますか?

私はちょっと自信がない……。

というわけで、ちゃんと調べたのでまとめます。

 

言葉の意味

まず、「触り」の正しい意味を確認。

触り

その義太夫節の中で、一番の聞かせ所(聞き所)とされる部分。広義では、一つの話の中で最も感動的(印象深い)場面を指す。また、近年は歌の冒頭の部分を指して言う向きもある。

『新明解国語辞典 第七版』(三省堂)より引用

一番の聞かせ所!歌で言う所のサビ!

冒頭とか導入部とか、最初の方といった意味じゃないですよ、と。

冒頭だけ聞こうとして『触りだけ教えて~』とか言っちゃうと盛大なネタバレ食らってしまうね。

誤用についても触れていますね。

辞典の中では正誤について明記はされていませんでしたが、

同じ言葉が違う所を指すのは、時代の流れとは言え中々受け入れ難いものがあります。

 

誤用である「最初」を表す気の利いた言い方ってある?

さて、「触り」の正しい意味はわかりました。

でも、じゃあ、

誤った意味の「触り」、つまりは「最初の方」の事を言いたいとき、何か別の言い方ってあるのだろうか。

冒頭?導入部?何かドンピシャな言い方はあるものなのか。

 

結論だけ先に言うと、ドンピシャは無さそう、です。

 

まず、類語辞典を引いて、「冒頭」に意味が近いものを調べたところ…

【冒頭】文章ないし発話(をともなう物事)のはじめの部分。

【出出し】何か物事が始まったその最初の段階。

【導入部】物事の中心となる主要部分へと導き、つながっていく、始まりの段階。

【前置き】話や文章で、本題に入る前に述べられる、始まりの部分。
【枕】落語などで本題の前に語る前置き。

『類語辞典 第1版』(講談社) より引用

こんな感じ。

「触り」の誤った使われ方からすると、

「冒頭」というよりは、もうちょっと広い範囲を指す「導入部」の方が意味は近い感じでしょうか。

一方、語感や使い勝手ならぬ喋り勝手が近いのは「出出し」でしょうか。(『話の出出しの部分だけ~』)

ただ、意味は冒頭に近く、「触り」(誤)からはやや離れる印象。

ちょっと変わった言い回しを求めるなら「枕」でしょうか。『話の枕の部分だけ~』みたいな。

語感は大分近い…けど、「前置き」だと意味が違わないか……?というのが気になる所。

 

上記以外で少し考えたのは、

正しい意味の「触り」を、歌における「サビ」とするなら

誤った意味の「触り」は、歌における「イントロ」が近いのでは!

『話のイントロだけ教えて~』みたいな!

ニュアンスは近いけど、意識高い系な感じが苦手だとちょっとイラっとするかも?

 

あと、類語としては紹介されていなかったけど「つかみ」とか。

『話のつかみだけ教えて~』なら、語感も意味合いも似た感じになるかな?

 

そんなわけで、ドンピシャで代替できる言葉はどうも無さそう……。

言葉の意味を重視するなら「導入部」。『話の導入部だけ教えて~』

語感を重視するなら「出出し」。『話の出出しだけ教えて~』

あたりが妥当かな。

「イントロ」もどんな反応が返ってくるのかちょっと気になるかも。

 

以上~。

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